未来の食卓を守るため──ASC認証の活用

イメージ:未来の食卓を守るため──ASC認証の活用
2022.11.22

私たちが普段、何気なく食べているおいしい魚たち。
その魚たちが「いつか獲れなくなるかもしれない」と言われていること、知っていますか?

毎日の食卓を守るためには、世界が足並みを揃えて海の環境保全に取り組む必要があります。 その点、消費者として私たちができることは、海の環境保全が守られた水産物を選び、海の環境保全を推進していくことです。

今回は、水産養殖の国際認証制度であるASC認証について、生産事業部の霍川幹史がお話します。 ASC認証の意義や現状の課題、ASC認証を活用したダイニチの描く未来について、お伝えします。

 

 

将来、魚が食べられなくなる?

日本国内だけを見ると、少子高齢化や食の欧米化により「魚食量が増えている」とは考えづらいかもしれません。 ただし世界に目を向けると、急激な人口の増加に伴い、魚食量も増加の一途をたどっています。

しかしながら、天然魚の量には限りがあり、このまま世界の魚食量が増えていけば、天然魚が枯渇してしまいます。 我々の身近な例では、2014年にクロマグロが絶滅危惧種に指定されています。したがって、魚食文化を守っていくため、さらには世界のたんぱく質需要を賄っていくため、養殖魚は不可欠な存在です。

水産養殖のリスク

しかしながら、水産養殖にも様々なリスクがあります。
環境汚染や水産資源の乱獲、生態系への悪影響のほか、国際的には劣悪な労働環境も社会問題となっています。 スーパーや回転寿司でいつでも美味しく食べられる養殖魚ですが、背景にはこのようなリスクが潜んでいます。

・ 水質や海洋環境の汚染
・ 養殖場建設による自然環境の破壊
・ 餌の原料となる魚 (イワシ、アジ等) の過剰漁獲
・ 病気や寄生虫の拡散
・ 水産用医薬品の過剰利用による耐性菌の発生
・ 養殖魚の脱走による生態系のかく乱
・ 劣悪な労働環境 (児童労働、奴隷労働)

したがって、環境保全や資源利用、労働者、地域社会に配慮した持続可能な水産養殖を普及させていく必要があります。

ASC認証とは

ASC認証とは、WWF (世界自然保護基金) と IDH (オランダの貿易団体) の支援のもと、 2010年に設立された水産養殖管理協議会 (Aquaculture Stewardship Council) が管理・運営する、水産養殖に関する国際認証制度です。

7つの原則からなる包括的な審査観点により、環境保全や資源利用、労働者、地域社会に配慮した持続可能な水産養殖を認証し、ASCラベルの貼付を通して、持続可能な水産物をマーケット・消費者に届けています。 なお認証の単位は養殖漁場ごとで、認証の対象は12魚種に限られています。(2022年3月末時点)

ASC認証の課題

当社は、2020年6月に世界で初めてマダイ養殖でASC認証を取得しました。 当社の場合、経営理念「魚で人を幸せにする」が、社員の意識に根付いているため、元々、持続可能な養殖への関心は強く ※、 ASC認証に出会ってすぐ、社内で取得に向けたプロジェクトが立ち上がったのも自然なことでした。

しかしながら、日本国内における養殖者の取得実績は依然として少なく、ASCの消費者認知もまだまだ低いのが実情です。 2022年3月末時点で、国内養殖者の取得件数は14件に留まっています。 また2019年の調査データによると、日本国内における一般消費者の認知度は1割しかありません。

※  他社に先駆けて、残渣の再利用やモイストペレットの開発に成功しています。 残渣とは、加工時に発生する残りかすのことであり、当社の場合、生ゴミとして廃棄せず、飼料原料として再利用しています。 またモイストペレットは、生餌主流の当時、食べ易く消化効率が良いことから、残餌や糞尿が抑えられる海にやさしい飼料でした。

※水産養殖管理協議会 (Aquaculture Stewardship Council)の資料より抜粋

ダイニチの描く未来

日本は古くから魚食文化が根付いていますが、とりわけ “天然信仰” が強いとされています。 どこの近海でも豊富な種類が獲れ、四季折々の旬を楽しむことができるため、天然モノが良いという感覚は当然だと思います。

しかしながら、ASC認証された養殖魚には、天然魚にはない4つの安心を備えています。

・ 「品質の安心」があり、いつでも美味しいこと
・ 「供給の安心」があり、いつでも食べられること
・ 「トレーサビリティの安心」があり、生産者の顔が見えること
・ 「資源循環の安心」があり、環境や社会にやさしいこと

ASC認証の普及と共に、養殖魚の良さをもっと知ってもらい、天然魚と養殖魚が共存していく、そんな魚食文化が望ましいと思っています。
そのためにも、これからも私たちは、ASC認証ブランドの品質と普及にコミットしていきたいと考えています。

 

 

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