世界初!ASC認証マダイが生まれるまで

イメージ:世界初!ASC認証マダイが生まれるまで
2022.11.22

日本一の養殖マダイ生産量を誇る愛媛県。
郷土料理の「鯛めし」など日常的に鯛が食卓に並ぶこの土地で、2020年に世界初となる「ASC認証マダイ」が誕生しました。

ASC認証とは、水産養殖管理協議会 (Aquaculture Stewardship Council) が管理・運営する水産養殖に関する国際認証制度です。 環境保全や資源利用、労働者、地域社会に配慮した持続可能な水産養殖を認証しています。 世界的にSDGsの機運が高まる中、より地球環境に配慮した養殖方法の一つとして、ASC認証の普及は進んでいます。

しかしながら、ASC認証の取得には、様々な高いハードルが存在します。 内海水産とダイニチが二人三脚で歩んだ長い道のりに迫ります。

より環境にやさしいマダイ養殖を目指して─認証取得に取り組むきっかけ

 

マダイの養殖に取り組むダイニチのグループ会社・内海水産は、愛媛県の最南端・愛南町にあります。 社長の織田太一さんは、家業を継いだ3代目。 小さい頃から宇和海で育ち、海と魚には強い思い入れがありました。 ある日、織田さんのもとに「国際的な認証を一緒に取りたい」と、ダイニチから連絡が入りました。

ASC認証は、そのとき初めて知りました。 2018年のことでしたが、ちょうど世間的にもSDGsが話題になってきた頃です。
私たちの周囲でも、海洋プラスチックごみの問題をはじめ、地球環境への危機感が高まっていました。 だから、「環境にやさしい認証なら取得するべき」とチャレンジすることを決めました。

百数十にもおよぶASC認証の審査項目

養殖経験が豊富な2社であっても、ASC認証の取得は簡単なものではありませんでした。

なんせ、審査項目が百数十ありましたからね……。 しかも、魚を育てる現場のことだけでなく、法規関連もたくさん。 関係者で集まって「ああじゃあ、こうじゃあ」と話しながら、一つひとつクリアしていきました。

気が遠くなるほどの審査項目があるなかで、織田さんたちを最も悩ませたのは「魚の健康管理」に関する項目でした。

マダイは比較的病気になりやすい魚種で、細菌性のものや心臓の病気、特定の水温帯で起こる季節性の病気等があります。 また、その年その年で流行る病気も変わるため、対策も一筋縄にはいきません。

健康で美味しいマダイを育てるための試行錯誤の日々

どうすれば、基準を満たしながら状態の良いマダイを育てられるのか。
小刻みに無数の試行錯誤を繰り返す日々が続きます。 突破口は、飼料・飼育密度・給餌方法の見直しでした。

まずは、飼料改良に取りかかりました。 人間同様、健康の秘訣は体に良い食事をとることです。 ビタミンや水分の配合比やたんぱく質原料の変更を積み重ね、消化にやさしく免疫力を高める飼料に辿り着きました。

続いて、飼育密度。 とにかく、マダイがストレスなくのびのび育つ環境を追求していきました。 通常、1つの生簀あたり10千尾で育てていますが、数多くの試験を経て、8千尾での飼育方法を確立しました。

最後は、給餌方法です。これが一番難しく、養殖屋の腕の見せ所でもあります。 今までの経験則から、満腹量を週に3・4回与えるのが最良と考えてきましたが、これに捉われず、日々のマダイの食いつきをつぶさに観察しながら、時には腹八部、時には1日3食と、柔軟に給餌していきました。

これらの取り組みが少しずつ実を結び、成長率や歩留まりも、内海水産が育てている従来のマダイと遜色ない水準まで迫ってきました。 そうして、ようやく認証取得の日が近づきます。

ASC認証の取得はゴールではなくスタート─これから内海水産が取り組むこと

やっていること一つひとつは、これまでと大きくは変わりませんが、それらをより突き詰めてやっていく感じでしたね。 現場としては「色んなやることがあるな……、ここまでやるのか……」というのが本音でしたね。 結果として、全ての項目をクリアして、認証取得するまでに丸2年かかりました。

こうして2020年6月29日、ダイニチと内海水産はマダイでのASC認証を世界で初めて取得。 同年の終わり頃から販売も開始されましたが、認証を取得して終わりではなく、「ここから先が大変だ」と織田さんは話します。

すでに二期生の養殖も始まっています。海の環境も年々変化していく中、ASC認証の基準を満たしたまま、「絶え間なく健康で美味しいマダイを育てること」、私たちの使命はこれに尽きます。 いつの日か、世界中の食卓にASC認証マダイが並ぶことを夢見て、今日も魚づくりに精が出ますよ。

2年もの歳月をかけて、世界初となる認証取得に至ったASCマダイ。
内海水産とダイニチ、愛媛県・南予の水産会社による二人三脚の取り組みは、まだまだ始まったばかりです。

share

ページトップへ